第232話

御園座の正月公演は、松平 健さん主演「座頭市」です。

今回の公演は松平健さんの芸能生活35周年記念の企画、芸能界へ憧れスターを夢見た青年を雇ってくれたのは大スター勝新太郎さんでした。付き人からのスタートでしたが俳優への階段を勝さんは大きな力で後押ししてくれました。

1978年(昭和53年)1月から放送されたテレビ時代劇「暴れん坊将軍」の主人公・八代将軍 徳川吉宗 役に、松平健さんが大抜擢される。

テレビ局も当時は誰も知らない新人俳優を起用しての企画だけに、番組スタート時は、大物スターに次々とこの番組への特別出演を依頼しました。

記念すべき第一回の特別出演は美空ひばりさん。

撮影は一年前の昭和52年、御園座4月美空ひばり特別公演の前に行なわれた。

東映京都太秦撮影所にての収録を終えて御園座公演に入られたひばりママは「プロデューサーとして久々に素晴らしい新人に出会えた」「これからの時代劇はあれぐらい大型でなくては・・・・間違いなくスターになるわよ」と監事室で私に話してくれました。

ところが、ひばりママからは松平健さんの名前が出てきません。「そのうちに放送するわよ」と締めくくられましたが、美空ひばりさんがゲスト出演する新人とは・・・・・それだけでも大きな話題として取り上げられます。

テレビ局の狙いは見事に的中し「暴れん坊将軍」はシリーズを重ね、放映回数831回。これは大川橋蔵さんの「銭形平次」888回に次ぐ長寿番組となりました。

まさに松平健さんの代表作に育て上げられた「暴れん坊将軍」ですが、余りにも将軍吉宗のカラーが付き過ぎてしまった事も歪めない。

今月の御園座公演は吉宗カラーを払拭する企画。恩師・勝新太郎さんの代表作「座頭市」への挑戦です。

30年前に、スターになると「ひばりママのお墨付き」を貰った松平健さんが、どんな座頭市を見せてくれるか楽しみです。