第552話

御園座の舞台を昭和60年(1985)から座長として公演を続けてきた五木ひろしさんが、来年正月に中日劇場へ出演される。

御園座への出演は平成24年の「御園座さよなら公演」まで続き、公演回数27回の座長最多出演を記録しています。 御園座の看板公演が中日劇場に引き継がれていく・・・・・名古屋の五木ファンのためにもスター特別公演のトップとして引き続き頑張ってもらいたい。 

五木ひろしさんの御園座初出演は、美空ひばりさんが最後の御園座公演となった昭和60年です。まさにひばりさんから御園座の歌手公演を託されたようにも思えます。

その年の美空ひばり公演は8年ぶりの御園座公演、腰痛に悩まされながらの出演でした。 体調が万全でない中、舞台公演を決めたのは長谷川栄一会長(名古屋のパパ)との「もう一度、御園座へ出演する」との約束を守るためでした。

そして公演中に、もう一つの約束「東京のパパ(故・川口松太郎)と約束した明治座出演」を果たすため昭和62年の公演スケジュールを決めたのです。

その後、ひばりさんの体調は一進一退・・・・・気力だけで明治座6月公演を目指しました。 しかし公演一ヶ月前には、一人では立っていられないほど病状は悪化し、東宝と明治座が美空ひばりさんの休演を決断しました。

既に6月公演チケットは売切れ状態の超満員です。 一ヶ月全期間の払い戻しは避けたいと、東宝も明治座も代役公演を検討したそうですが・・・・・演歌の女王・美空ひばりさんの代役に誰も手を上げる役者はいません。 しかも一ヶ月後のスケジュールです。 空いている歌手も役者も見つかりません。

そんな明治座の苦境が、御園座にも伝わってきました。 御園座の5月公演は私がプロデュースした杉良太郎特別公演です。 初日が開いてホットしている私に、座長部屋から緊急の呼び出しがありました。 杉さんは「今月御園座で上演している公演の演目も、役者も、大道具も・・・・・全部そのまま6月の明治座へ持って行きたい、協力してくれ!!」と言ったのです。

今、思い出しても良くぞ乗り越えました。 座長も私も若かったから・・・・

写真は壊される御園座です。劇場西側の商店街から御園座会館地下へ入るスロープがあった部分、大きく取り壊されている。
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