カテゴリ: 杉 良太郎

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第169話

翌日は、杉良太郎特別公演の芝居を舞台にて稽古。

緊迫した稽古が続けられていますが、私の頭の中は 飛行機 飛行機 飛行機 ・・・・・・・

竹内先生は、早朝より業者の工房へ出掛けられています。

業者に連絡しても「明日に間に合うかどうか、判りません」「ギリギリでしょう」と悲痛な答え・・・・・・

とうとう「ショー」の舞台稽古。

何んとか伸びる飛行機は、仕上がりました。

ショーの音響スタッフは、大谷孝文さん(通称ポンプ)「迫力あるプロペラ機の爆音出してや、ポンプさん」

照明のスタッフは、中川成俊さん(通称とっつあん)「幕開き、舞台に飛行機が見えんくらいスモーク炊いとってや」「照明でアラは隠してや、頼むで、とっつあん」

すっかり、竹内先生の関西弁うつってもうた。

杉さん登場。

ポンプさん、ここぞとばかり大爆音。 薄暗い夜明けの霧の中から飛行機が前進します。

すると杉さん 「もっとプロペラ 廻せ」「モットモット 速くプロペラを廻せ」と・・・・・・

竹内先生と私は、業者を探しますが居ません。
この肝心な時に・・・・と腹立たしく思いながら客席の通路を見ると黒い影が、何んと業者は劇場隅の通路に正座して座って居るではないか・・・・・

「どうしたんだ」と声をかけると、「もうダメです、もうダメです」「あれ以上廻したら、何処かへプロペラ飛んでいってしまいます」と訴える始末。

仕方なく、座長に「これ以上廻りません、エンジン取り替えます」「本番に用意します」と次に稽古を進めて頂くことに・・・・・

平成5年5月 初日
「ショー」の幕開きは圧巻でした。
場内に響く、プロペラ機の爆音が高まる中、闇を裂いて前進してくる予想だにしない大型輸送機。
客席からは「ウォーーー」という驚きの喚声の後に、大拍手が沸き起こり杉さん登場を待ち受けます。

竹内先生と私は「ヤッタ、ヤッタ」とかたい握手を・・・・・

話題になったショー舞台が、御園座の社内誌の表紙を飾りました。

連載 お わ り

第168話

夕方、杉良太郎特別公演の「芝居・総ざらい」も終り、杉さんに飛行機の出来を確認してもらうため関係者と共に舞台に移動。

杉さん、正面から見て「流石に、でかいなぁー」と一言。

やれやれ、何んとか無事にOKが出るかと思ったのは甘かったです。

楽屋へ戻るため飛行機の横を通った杉さん 「何じゃーこれは」「こんな寸足らずな飛行機あるかぁー」

やっぱり キタァーーー

プロデューサーとして此処は言わねばと「座長、道具転換の事もありますから、これが精一杯の長さです」

座長の反応を関係者一同、固唾を飲んで見守ります。

杉さん「舞台奥に置いとく時はこの寸法で、前に出てくる時に伸びれば良いだろう」

唖然とする一同に

「アコーディオンのように伸びれば良いんだよ」と楽屋へ帰られてしまった。

ショーの舞台稽古は明後日、それまでに伸びる飛行機を造らねばと装飾業者を非常招集、竹内先生を中心に緊急打合せに入りました。

とにかく主翼の後ろで胴体を切断し、尾翼との間に布製胴体を2m程継げ足すことに・・・・・・

しかし業者は「アコーディオンにするは良いですよ、でも伸びたらムカデのように地面に這ってしまう」と怪訝な顔つき。

時間ばかり経ってゆき、深夜の舞台に残っているのは竹内先生と私と業者だけ・・・・・いずれにしても解決策を見つけねば。

そこで私の底力「よしッ 背骨を入れよう!」と動き出した。

説明しているより現物を持ってきますと、劇場地下の電気室・資材置場から3m程の鉄パイプを2本、担いで舞台へ。

『太さの違うパイプを片方のパイプから伸縮棒が出てくるように仕込み、主翼側に内側パイプの頭をつなぎ、尾翼側天井に外側パイプを固定させれば、伸びた時に尾翼背骨からアコーディオン部分の背骨が出て来るでしょう』 『あとは飛行機胴体の布をベニヤで所どころハンガー状にすれば、ワイヤーが伸びて次々とハンガーが出て行く』どうですか・・・・・・

夜中の2時すぎ、良いも悪いも、あと一日の製作日しかありません。

竹内先生、もう倒れそうです。  私も業者も・・・・

つ づ く

イメージ 1第167話

ショー構成・演出の杉良太郎さんに「舞台で造れる最大の飛行機を出します」と右図面の道具帳を見せて、何んとか説得。

いよいよ、飛行機製作へ・・・・

自衛隊機をモデルにするが、両翼の長さは飛行機が舞台奥から客席側へ前進してくる事を考えると廻り盆の直径8間(14.5m)が限度です。

胴体は、杉さんが立って機内を歩ける高さを確保。そして幕開きにバンド台を割って登場させ、又元へ戻さなければいけない。

果たして、御園座業者の手に負えるのか? 不安がよぎります。

竹内先生には、何度も名古屋へ足を運んで頂きご指導を・・・・・

私は、東京・築地本願寺にある振風道場にて「芝居」の稽古に立ち合い、名古屋へ入るのは月末になってしまいます。

御園座へ一座を迎え入れ、地下2階のホールにて顔寄せ、そして総ざらい稽古へと進みます。

芝居の稽古途中、竹内先生が来られ私に「飛行機、杉さんに見てもらいましょ」とささやかれた。

私も組み上げられた機体は、まだ見ていません。
早速、舞台で対面しましたが、流石にデカイ。

前から見れば立派なんですが、横から見ると主翼のすぐ後ろに尾翼が付いたオモシロイ飛行機に仕上がっています。

竹内先生も業者も不安一杯の顔付き。

プロデューサーここまでの苦労が解かっているだけに「ダメ」とは言えません。

「長さは、仕方無いですよね。杉さんに見て貰いましょう」と明るく言ってはみたものの・・・・・・

私も、本音は泣きたいぐらいでした。

つ づ く

第166話

東京・西麻布にある杉良太郎さんの事務所を出てきた美術の竹内史朗先生と私は、ひとまずショーの基本プランを纏め上げれた事に「今日は、成果がありましたね」とニッコリ。

だが、飛行機とは・・・・・・

竹内先生は、私に「沖縄へ、行くんですか?」とおっしゃる。

私は、先生を喫茶店に連れ込み、「行く訳 無いでしょ!」「堪忍して下さい」 御園座の舞台への資材・機材搬入口は驚く程の小ささです。

(先日書いた、陽明門も舞台で組み上げた物。そう、ビンの中に帆船が入っている状態です)

先生に「鉄で作った本物の飛行機を劇場表の伏見通りから入れる事は出来ません」と・・・・・

「小型機なら、翼を取ったら入りませんか」

「先生 小っちゃな飛行機入れても、舞台では 何じゃこれは!ですよ」

「どないします。 今から事務所へ戻って杉さんに訂正しますか?」

「・・・・・・・・・・・・」

「先生 目一杯 大きな飛行機造りましょ。ハリボテで・・・・」

「自衛隊が災害時に物資を運ぶ大きなプロペラが翼に付いたデカイ飛行機ありますよね。 あれでゆきましょ」

先生も話しに乗ってきて「そしたら、飛行機の中から杉さん登場。どうでっか」

「先生 飛行機は前を向いてますよ。横から降りてはカッコわるいでしょ」

「そんなら、前から降ろしましょか」

「飛行機の操縦席が、上から下へ開いて杉良太郎さん登場。どうでっしゃろ」

ダンダン 恐ろしい事になっていきます・・・・・・

つ づ く

第165話

御園座の7月公演は、北島三郎特別公演。今回もショーには漁船・ねぶた屋台など特殊な道具を登場させてお客様を楽しませています。

北島さんのショーに限らず大掛かりなショー道具は、秋山メカステージが業界の草分け的な存在。

私がプロデュースした杉良太郎特別公演も長くこの会社のお世話になりました。又、社長とも気が合い何でも相談できる間柄。

そこで、手直しが多いショー道具を名古屋で造れないか、そうすれば舞台稽古でも対応が早いと、御園座出入りの看板・装飾会社へ切り替えをさせて貰うことに・・・・・

もともと劇場の道具製作が遅れた時は、ショーセットのユニットは今までも装飾会社に発注はしていましたが・・・・・特殊道具になると、やはり秋山メカさんのような経験がある業者を選ぶことになっていました。

しかし、私は「何事も最初の仕事が無ければ、次は生まれない」御園座の業者に力を付けさせたいと向こう見ずに進めてしまいました。

杉良太郎公演のショーは、美術プランの竹内史朗先生とプロデューサーの私、そして構成・演出の杉さん本人との打合せから始まります。

あらかじめ竹内先生にアバウトな基本セットを書き込んでもらい、それを土台にディスカッション。

何時も行き詰るのは、ショー道具の目玉をどうするか。

この時も、何を出しても今一つ物足りなく・・・・・
意見が、まとまりませんでした。

私が「東宝ミュージカルのヘリコプターは話題になりましたよねぇ」と口を滑らしたのがとんでもない事になろうとは・・・・・

杉さん 「よしッ、飛行機を舞台に出そう」 「沖縄の米軍に行って、壊れた飛行機を安く買ってくれば良い・・・・・」

竹内先生も私も折角まとまりかけてるプラン、潰すのも勿体ないと二人とも阿吽の呼吸で 「それで ゆきましょう」 と言ってしまいました。

あーあー   どうなる。

つ づ く

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