カテゴリ: 芝居・俳優・劇評

イメージ 1第501話

「大菩薩峠」は小説家・中里介山が長編時代小説として、1913年(大正2年)から1941年(昭和16年)の長期にわたって、新聞などに連載した41巻にのぼる未完の一大巨編です。

28年間の長きにわたる連載物を劇団「新国劇」は、区切りを付けて舞台化し上演。主人公・机龍之助が抱える無明の闇を辰巳柳太郎が演じ大評判となり、再演・続演が繰り返された。

御園座の上演記録にも・・・・・

昭和8年3月「大菩薩峠」前編 武州御嶽 ~ 京島原
二の替り 後編 三輪竜神 ~ 二見の浦

昭和12年11月「大菩薩峠」 第一部

昭和24年12月 中里介山追善「大菩薩峠」を昼夜ぶっ通し

昭和26年1月 「大菩薩峠」 第二編 第三編を昼・夜に分けて

すべての公演が辰巳柳太郎の机龍之助、島田正吾の宇津木兵馬にて上演されています。

これ以降は、御園座での上演記録が見つかりません。 映画では昭和32~34年片岡千恵蔵、そして35~36年に市川雷蔵にて上映されている。

そんな幻の名作「大菩薩峠」を新国劇を受け継ぐ劇団・若獅子が、今年の6月公演に取り上げました。もちろん劇団代表の笠原章さんが机龍之助を演じます。

名古屋での公演は、6月30日(日) 名鉄ホールにて開催です。

問合せ・申込み  名鉄ホール 052-561-7755 ・ 劇団若獅子 03-3356-9875

イメージ 1第483話

昨年から始まった御園座さよなら公演も とうとう現劇場最後の公演「三月大歌舞伎」二代目市川猿翁・四代目市川猿之助・九代目市川中車 襲名披露の公演となってしまった。

今日は御園座OBの友人から観劇の誘いを受け、昼の部「小栗栖の長兵衛」「黒塚」「楼門五三桐」を観てきました。

何時もは劇場一階後方の監事室からプロデューサーOBとして芝居を見ていたが、今日は友人が二階客席の切符をわざわざ用意してくれた。

久々に御園座客席からの観劇です。平成7年(御園座創立100年)の大改修で劇場内は全てが新しく造り替えられており、ロビー周りも常にメンテナンスが行き届き、今月末に劇場閉鎖とは・・・・・・とても思えません。

御園座の素晴らしさを上げるなら、何よりも舞台寸法の良さでしょう。 まず客席からみた舞台額縁は、間口12間半(22.72m)・高さ3間5尺(7m)そして舞台面は奥行き10間(18m)に直径約8間(14.5m)の廻り舞台が納まっている。

実にバランスが良い、間口は広すぎず狭すぎず、高さも調度良い。 舞台の使い勝手は、上手下手の大臣柱奥から舞台へ出入りする役者の動線に無理が無い。また舞台奥行きが深く、役者が客席から少し距離を置くことができ、演じやすく観やすい劇場として多くの方々から評価を頂いています。

そして長さ11間(20m)の御園座の長~い花道は、ある時は役が途切れてしまうと役者を泣かせ、ある時は万来の拍手を贈られ役者冥利が味わえると「芸どころ」名古屋の劇場に相応しい寸法です。

今月の演目「黒塚」でも使われている所作舞台は、歌舞伎上演劇場で最も大事な大道具。檜板張りの所作舞台は厚過ぎれば役者の膝を痛めてしまい、薄すぎれば板が割れてしまう。役者の踏み鳴らす強さに応じ心地よい音がでるように板は少し軸受けから浮かせてあります。

多くの名優が踊った御園座の所作舞台。今月は四代目市川猿之助さん演じる老女岩手・実は安達原鬼女の「静と動」が見どころです。

先代猿之助さんの「黒塚」を彷彿とさせる中に、四代目ならではの繊細な仕上がりとなっている。

素敵な舞台を見せてもらいました。

イメージ 1第460話

御園座が今年の4月から来年3月までの公演に「御園座さよなら公演」とタイトルを付け、来春に現劇場再建50年の歴史に幕を降ろします。

「さよなら公演」には 六月の大歌舞伎、十月中村勘九郎襲名の吉例顔見世、そして市川猿之助・市川中車襲名の三月大歌舞伎と3回もの歌舞伎公演が並び話題となっています。

また今年の2月には花形歌舞伎と銘打ち尾上松緑・尾上菊之助等の公演があり、歌舞伎ファンを喜ばせている。

しかし、今月の六月大歌舞伎は、東京・新橋演舞場の猿之助・中車襲名や、九州・博多座の又五郎・歌昇襲名に歌舞伎俳優が分散し、御園座はやや手薄の座組みとなっているのが心配でした。

6日に昼の部、今日10日に夜の部を観劇してきましたが、昼夜に亘って市川海老藏さんが大奮闘、昼の「夏祭浪花鑑」では主役の団七九郎兵衛の他 徳兵衛女房お辰をも演じ、女形においても一段の芸域を高めている姿を見せてくれました。

夜の「石川五右衛門」は新作歌舞伎ですが、荒唐無稽の話に市川家の「荒事の芸風」を上手く取り入れ、海老蔵さん大奮闘の内容です。

心配された座組みの薄さも忘れさせる熱演でした。 

役者ぶりの良さ、口跡の良さ・・・・歌舞伎役者として計り知れない潜在能力を持たれている。

イメージ 1第459話

今日、名鉄ホールでは劇団「若獅子」の結成25周年記念公演として「白野弁十郎」が上演されました。

この作品は、17世紀に実在した剣豪作家・シラノ・ド・ベルジュラックを主人公にしたフランス戯曲を、新国劇の創立者・澤田正二郎が日本版時代劇「白野弁十郎」として大正15年に初演、劇団の新しい財産と大評判となりました。

しかし昭和4年3月、澤田正二郎は36才の若さで急逝してしまう。
劇団は彼に代わる劇団スターを見いだすべく「新人抜擢公演」を催し、当時は無名だった島田正吾、辰巳柳太郎が選ばれ、島田は「白野弁十郎・大詰僧院の場」 そして辰巳は「国定忠治・赤城天神山の場」を上演した。

御園座の記録にも同年3月に澤田追悼公演がなされ、5月公演の初日前日には「新人抜擢臨時公演」を催し、これを無料にて公開したと有ります。

島田正吾が受け継いだ「白野弁十郎」完全版は、御園座では昭和35年11月に一度だけ上演されているが、御園座ビル再建後に入社した私は、残念ながら今まで観劇出来ないでいました。

島田正吾の一人芝居「白野弁十郎」が人気を博し、もう完全版は観られないと諦めていましたが、新国劇を継承する劇団若獅子が取り上げてくれました。

主役の白野はもちろん笠原章さん。白野が恋こがれる千草姫に河原崎国太郎さん、土佐守に横内正さん、そして横沢祐一さん・森宮隆さん等の外部参加を得て、劇団員総出演で熱のこもった舞台を創り上げていた。

潤色・演出をされた田中林輔さんは、私が御園座に入社した昭和39年には既に新国劇の文芸部で活躍されていた大先生です。

今回の公演プログラムにわざわざ「澤田正二郎 演出に拠る」と添え書きされているのにも先生の謙虚な人柄が窺えます。

島田・辰巳時代の新国劇を知り尽くした田中演出から創りだされた「笠原・白野弁十郎」は、沸々と湧き上がる恋心をひたすら押し殺し、悶え苦しむ男心を大熱演している。

特に大詰の僧院(金光院)の場では、死を覚悟した白野弁十郎が延々と続く長台詞を吐露してゆく・・・・・笠原さんも役者冥利に尽きるとお思いでしよう。 素晴らしい舞台に仕上がっています。

貴重な舞台を再演して頂き ありがとうございました。 

(文中一部敬称略)

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第453話

今日12日は、演歌歌手・島津亜矢さんが全国の大劇場に先がけ、御園座で初座長として本格的に「芝居」と「ショー」に取り組んだ「島津亜矢特別公演」の初日です。

芝居は、幕府と薩長の対立が激化する中、会津藩の兵法師範を父に持つ山本八重(島津亜矢)の活躍を描いた「会津のジャンヌダルク」

会津若松・鶴ヶ城を攻め落とそうとする官軍相手に、山本八重が七連発の新式銃を手に立ち向かった史実をベースにし、脚本家・堀越真が洋学者(田中健)との出逢いから恋心・結婚そして別れと手際よくまとめている。

時代の背景となっている戊辰戦争や白虎隊などの話を新作浪曲として島津亜矢さんが幕開きに見せ、場のつなぎに聞かせてくれるのも嬉しいです。 

それにしても初めての座長公演、田中健さんを相手に二幕の長丁場「勝気な会津娘・山本八重」を演じ切っている。

島津亜矢さんが、今まで歌手として取り組んできた数々の「名作歌謡劇場」の作品の中にセリフ入りも有り、「芝居心」は出来ているとは思っていましたが、役者・島津亜矢としてここまで魅せてくれるとは・・・・  素晴らしい。 

彼女の頑張りに客席からも大きな拍手が贈られていました。

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