第576話
御園座は、今から120年前の明治29年(1896年)6月19日に、劇場の運営会社「名古屋劇場株式会社」として登記されました。 その後、昭和22年社名は劇場名と同一が良いとし「御園座株式会社」と変更します。 御園座は昭和20年の戦火による劇場焼失、昭和36年の火災による焼失など大きな劇場存続の危機もありましたが、演劇愛好家の熱い思いと財界の支援によって劇場再建を果たしてきました。
「演劇の殿堂」として東京・大阪の大劇場にも誇れる御園座でしたが、郵政民営化により全国劇場を支えていた観劇団体「簡易保険観劇会」が、新規募集から観劇特典を企画できなくなり、団体依存率の高い御園座はじわじわと苦境に立たされて行きました。 追打ちをかけるようにリーマンショツクからの不況が、個人客への開拓路線を選択した御園座を追い詰め・・・・平成25年3月に劇場を閉鎖、劇場敷地を売却しての御園座再建策に至ったのです。
来年12月にはタワーマンションと合併した劇場は完成し、平成30年4月の開場を予定している。
今回の劇場再建は、以前のような突発的な災禍による劇場焼失ではなく、劇場運営の行き詰まりと建物耐震化ができないビル老朽化が、大きな問題となりました。
劇場運営は中日劇場を持つ中日新聞社が支援し、最大課題の増資による建設資金は三菱東京UFJ銀行が財界をまとめられたようです。
名古屋においては名鉄ホールが撤退し、中日劇場も貸劇場での運営を見据えており、劇場経営の先行きが不安視される中での再建です。
「新 御園座」に期待する演劇愛好家に、どんな魅力を創り上げるか? 来演した役者にどれだけ居心地の良い場を提供するか? 答えの全てが、御園座の120年の歴史に織り込まれていると思います。
写真は、御園座客席後方の監事室(管理室) と 同室からの舞台客席の眺めです。
何十年もこの部屋から芝居を見続けた思い出の場所です。