第558話
「御園座 解体されました」の記事を載せると役者さんのfacebookに、劇場を懐かしむコメントが寄せられていました。
舞台での事、楽屋での事・・・それぞれの思い出が残っていた劇場が無くなっている。
あの跡地写真に複雑な気持ちになられたと思いますが、コメントに「舞台も楽屋もほんとうに良い劇場でした」「劇場スタッフの人柄も劇場の作りも最高でした」「新御園座が楽しみです」など・・・・温かい言葉を頂いている。
御園座は、全国劇場の中でも数少ない舞台大道具製作から公演に携わる舞台・照明・ミキサー・小道具の係りを社員としており、その他にも観客係り・楽屋係りも配し、お客様へのサービスは勿論、舞台の仕上がりから俳優のお世話を大事にしてきました。
私が御園座に入社した(昭和39年)頃、観劇は高級娯楽として入場税が課せられていた時代です。 世の中全体がまだまだ貧乏な生活が一般的でした、役者も劇場社員も貧しかったです。 それでも「芝居の世界」には貧乏を忘れる魔法の「夢」が有り、舞台を支える「絆」が生まれていました。
当時、御園座の役者に対する「おもいやり」は、ギャラの少ない下座の役者を楽屋上層階に旅館のように寝泊りさせ、楽屋食堂を開設した事など・・・・多くの役者さんが語っています。
舞台では、歌舞伎・新派・新国劇・松竹新喜劇・・・と「義理」「人情」に溢れた芝居が上演されていた。 時代が移ってスターが主流の公演になっても劇団経験者の舞台役者の層は厚く、魅力あるスターに見応えある芝居となり客を魅了していました。
しかし、どこの劇場も大スター・歌手への安易な依存に陥って「芝居の質」を支えてきたスタッフ・役者への「おもいやり」が徐々に希薄になってしまった。
御園座でもスタッフ・役者と共に何日も深夜に及ぶ稽古に付き合った「芝居のわかる」社員がいなくなっている。
何処かに「忘れ物」をしてきたように思うのは、私一人でしょか・・・・・・